神経科学、東洋医学、ポリヴェーガル理論に基づくメソッドで、健康な生活をサポート。

難聴

聞こえない不安、辛いめまい/突発性難聴

ある日、突然発症する突発性難聴。
薬を飲んでもなかなか改善しないケースも・・・


🔶服薬と安静で回復を待つが・・・

「朝起きると、右耳が聞こえにくい。」との相談があり、めまいも感じるとの事で、すぐに耳鼻科受診を勧めた60代女性のケースです。耳鼻科で「突発性難聴」と診断され、5日間が経過し、服薬と安静によって一旦は症状が軽減したものの、再び「めまい」「右耳の聴力低下」が悪化傾向となり、特にめまいと共に「吐き気」の症状に悩まされている状態で、施術の依頼を受けました。

✅主な訴えや症状
めまいが常にある。
耳鳴りがする。
吐き気がする。
右耳が聞こえにくい。
手足が冷える。
体の温度調整が難しい感じ。
頭がボーっとする感じ。

✅検査/評価
*ウィスパーテスト(耳の近くで指をこすり合わせる音を聞いてもらう)で右の聴力低下が確認される。
*寄り目の状態から戻る時に左眼の眼振(眼球が痙攣したように揺れる)が出現。
*足踏みテスト(目を閉じてその場で足踏み)
 ⇒1m以上前に進む。(テスト陽性)
*首を曲げる(反らす)、傾ける、左右に振り向く角度が不十分。
 ⇒首の関節可動域制限あり。
*視線を下に向けると筋力が低下。⇒下方向への眼球運動低下。
*右咬筋(咀嚼筋)、右胸鎖乳突筋の過緊張と圧痛あり。
*右手の感覚低下。
*左側の肩~背中の深部感覚の低下。
*握力低下。

🔷施術🔷
 カウンセリングや検査などを総合すると、右脳の働きが弱っている状態にあると考えられ、自律神経のバランスや働きは乱れた状態となっていました。まず、頭蓋の施術と共に顔面・頚部の筋肉の緊張を緩め、背中の兪穴(ツボ)を刺激します。また、首の可動域制限が目立ち、眼球運動の異常も認められ、頭(首)と眼の動きの連係が上手く取れていない状態にあると考えられ、頭部と眼の動きの連携を改善するように施術を行います。

 首の前後の可動域制限が強く、改善には時間を要しましたが、全身の筋肉や神経系の調整を行うことで、正常な可動域に近づきます。左よりも右半身の緊張が高い状態であり、右の聴力低下との関連は深く、右半身の緊張を緩めるように施術を行うと、「頭がスッキリしてきた。」と言われます。

 最終的には、手足の経穴(ツボ)刺激が有効で、特に右手足の施術は心地良いとの事。施術後の足踏みテストの移動距離は1m以内に収まっており、テストとしては正常です。ウィスパーテストは左右差が少なく、聴力はおおむね改善。首を動かした際のめまいは軽減しており、右手足の経穴(ツボ)にテープを張るとめまいが軽減するとの事で、テープを貼って施術を終了とします。なお、感覚の低下もほぼ正常となっていました。

🔷考察🔷
 足踏みテスト(閉眼)は、前方に進んでしまうので、平衡(バランス)感覚を制御する前庭系の異常が生じていることは分かりやすく、聴力の低下、感覚の低下(右手や左肩~背中)、眼球運動の異常などを考えると、脳や自律神経を中心とした神経系の機能に異常が生じていることは明らかでした。また、頚部の可動域制限が強く、頚椎周囲の筋緊張もめまいを助長していることが考えられました。

 改善が得られやすかった施術の組み立てを考慮すると、やはり、脳への刺激や自律神経を調整する刺激が改善につながっています。身体に必要な刺激を加え、神経系のバランスを整え、身体全体のシステムが正常に働くように導いていくことが重要なのだと改めて実感しました。